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月夜乃散歩

 

現実と幻想の境界性アーティスト


「キレイ」と「コワイ」は紙一重。


月の光に照らし出されて、不安のアレゴリーの饗宴が始まろうとしている。

     飯沢耕太郎(写真評論家)

「不安と耽美」 

暗示的で非現実的そして夢幻的な表現で作り出される「月夜乃散歩」の世界は、彼の心の暗闇に潜む深い不安を、割れたアンティークなガラス瓶のかけらや、廃墟の思わせる背景に宙を舞う無表情の少女達の姿を借りて、シュールに投影させている。

彼の作品の特徴は、絵画のような落ち着いた色調に仕上げる為に、製作過程で中世の寺院の壁や廃墟のテクスチャーを何枚も重ね合わせ、さらに不安の心像を象徴的に現すアレゴリーを幾つも織り込んでいるところにある。

いかにもマニエリストらしい表現である。

 

彼の作品を見た瞬間、時の止まった静寂さと異次元の世界への迷いと戸惑いを感じさせるが、何時の間にか静かな安らぎと耽美な世界に包まれてゆく快感に、浸っていることに気づかされる「月夜乃散歩」は、月の光に照らし出された心の不安の在り処を求めて、永遠にさ迷い続けるのであろう。 

 

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